30.カメリア(椿の花の色)


寒椿の花に触れる

“初心に還れ”

そんな言葉が聞こえてはっとした

凍てつく夜に 心を寄せて
与え合うわずかな温もり
それだけが確実なもののように
この手のひらの中にある
唯一の欠片

それが
FROZEN PASSION
凍れる激情

それが

火傷するほどの熱情なんて

まして一心に傾ける情熱なんて

そんなものは俺には関係の無いもの

熱さ
そんなものは俺には似合わない

決めつけていた

戒めていた

熱くなることはすまい
冷静沈着 どこまでも冷酷であれ

覚めた瞳で 冷めた態度で

ただ本質のみを鋭く穿つ

初心に還れという声を聞く時
心に浮かぶのは
極寒の世界
雪の原ですらない
そこは氷原
見たこともないはずの氷の世界

そこは魂の還る場所
そこが魂の還る場所

そこから魂は
絶対零度の宇宙へ彷徨う

そこから

激情胸に

生まれてくるんだ

どこまでも冷えた
激情

その比熱こそ
エネルギーとなって俺を動かす

遠く凍えた
暗闇の未来へ
俺を追いやる
走らせる

椿の花が落ちた

潔く きれいなままで散るがいい

そんなにきれいに 死ななくていい

どちらの言葉にも耳を貸さない

一瞬のうちに
椿は凍り

くだけ散る

その一瞬のために

いつか来る一瞬のために

…  …

凍れる激情

胸に抱いて


※無断転用・転載を禁じます。