69.瑠璃・ウルトラマリン・ラピスラズリ


blue rose...

それは 存在しないはずの色 存在しないはずの花

わたしはここにいる  わたしはここにいない

わたしはそこにいる  わたしはそこにいない

街を歩いていても  誰も私を振り向かない

確かにわたしはここにいるのに  わたしには

わたしの四肢や わたしの影が見えるのに

誰もわたしを振り向かない  誰もわたしに触れない

わたしは生まれつき声が出せない  わたしの声を誰も聞かない

アーケードの中に花屋がある  そこには色とりどりの薔薇がおいてある

その色とりどりの薔薇の中に一本  青い薔薇がある

わたしはそれを取る  店員もお客さんも何も言わない

わたしは駆け出す  街の中を駆け抜ける

誰もわたしに触れない  誰もわたしを振り向かない

薔薇の花を見る  青い薔薇はここにある  青い薔薇はここにない

誰もわたしに振り向かない  誰もわたしを触れない

薔薇には棘がある  その棘を手首にあてて思いっきり引っ掻いた

赤い血が流れるはずだった  流れたのは真っ青な血だった

はっとしてわたしは手首に手をあてた  持っていた青い薔薇が落ちた

誰もわたしを触れない  誰もわたしを振り向かない

わたしはその場に倒れた  青い薔薇の隣に倒れた

青い血だまりの中で  わたしは息絶えていく

誰もわたしに触れない  誰もわたしに振り向かない

青に染まって息絶えていく 静かに 永遠に  青の中で

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