74.鉛色


神様が本当にいるのなら
叶えてみやがれ世界平和

この指とまれ! 世界中が同じ歌をくちずさむ日
狙い定めたライフルの先に ほら、青い鳥がとまるよ!
              (コブクロ『この指とまれ!』より)

テレビや写真で見る戦争の現場
それは自分の本当に遠くにあるもので
どこか異世界めいた印象しかない

でも 想像することはできる
隣に立っていた人がライフルで打たれたら
人々が行き交う街に 突然爆弾が降ってきたら
日常なんて簡単に混沌に飲まれる
累々たる死体と 地獄絵図のような光景
思わずひやりと背中が凍える

しかも いつそんな事態が訪れてもおかしくない 本当は

だからこそ 戦争を知らない
平和に浸かりきった僕たちでさえ
争いが無くなることを祈る

本当はきっと誰もが同じ思いのはずなのに
争いはやまない

僕が持っているのはほんのちっぽけな力で
僕の大切なものと大切な人を
守るのがきっと精一杯で
そしてきっと誰もが同じ思いで
大切なものを守ろうと戦っている

今この時 戦争の現場にいる人だって同じ
自分の命を守るために 誰かの命を奪うしかない

でも それはおかしいとどうして気づかないのだろう

僕は戦争の現場なんて知らなくて
争いをとめる力も無いけれど
祈り願いながら大切なものを守ろうとする意志はある
進んで戦いもしよう
でも ライフルを向けるのは
同じく大切なものを守ろうとする人ではなくて
そんな愚かな戦争を起こした相手にこそ
鉛の玉を打ち込んでやる

けれど何より そんな日が
永遠に来ないことを祈っている
もうだれも そんな思いをしない世界が
来ることを心から願う

世界中が同じ歌をくちずさむ日
そのメロディーはどんなだろうか



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