85.ターコイズブルー
月の綺麗な晩に
用意したのはターコイズブルーの陶器のグラス
それから決して高くはないが強い酒
それをなみなみとグラスに注いで窓をあける窓辺で何度もグラスを置き換えて
具合のいい位置を探す
月がグラスの酒に映るこれは簡単な錬金術
ふむ、こんな夜は冗談も冴えている
満足げにしばらくグラスを眺めていた酒の水面に揺れる月
月の光を飲み込んだ月光酒
ゲッコウシュ 意外と響きも良いではないかたいそう簡単な錬金術
安い酒も甘露に変わる
アテがないのがさみしいところくいと一口飲んでみる
喉を焼いて滑り落ちる
思わず歌い出したくなるほど気分がいい酔っぱらった月がグラスから逃げ出す
ちょっとグラスを引いてまた
月を捕まえた
お前も一緒に酔えば良い
青緑のこの杯に酔い留まっていればいい佳い月夜の晩には誰もが詩人になるらしい
酒のみ李白になるらしい遠い異国の宝石によく似たグラスは
些事から人を遠くへいざなうそうして 遠い世界に思いを馳せる
月の綺麗な晩に