90.蒼
ひた走る 夜道を 自転車に乗って…
耐えられなかった 彼と同じ空間にいるのが
くすんだ夜の色 遠回りで家に返ろうと決めて
自転車にまたがる 右手には火のついた煙草
一口吸って 走り出す
家とは反対方向 美術館と高校の前を通って
さあ どこへ行こうか
部室の窓から見える 高い建物
新しく出来たマンション
そこへ向かって走る
そのわきをすり抜けて 思う
遠くから見ないと 建物がどれぐらい高いのか
わかんないもんだな
街灯は優しく 人気のない夜道を照らす
もうすこし時間が経てば この葛藤も消えるだろうか
ヘッドライトとすれ違う 信号を無視して角を曲がる
国道48号線 通称ヨンパチを駅方面へ
大学病院の前を通りかかる 信号は無視
昔一度 この曲り角をまがってずっと 北山の方へ行ったことがある
まっすぐのびる道に誘われて 照る日の中どんどん進んで
そんなことを思い出しながら通りかかる
弱くなったのだろうか 自分は
人気が多い ライトも多い 夜のざわめき
どんどんまっすぐ この次の交差点で曲がろう
いやその次…
それの繰り返しでいつしか上杉のあたりへ
見ず知らずの町並み 道に迷う不安はなかった
自転車に乗っている時は何故か強気 犬も平気
まだ もう少し 次の交差点まで
だって 道はまっすぐのびている
夜の息吹 静かな住宅地 平和そのもの
多分 思っているほど 辛くないんだろう 自分は
道はまだまだまっすぐ続いてる もう少し先まで行こうかな
右手を見たら 駅近くの建物の頭が見えた
どうしてなかなか線路にぶつからないんだろう
しばらく考えて そろそろ家の方へ向かうことにした
次の交差点でこそ曲がろう
いつかまた今度 明るい時に散策に来よう 絶対
大手スーパーの前で信号を右にわたる
まがった先の道もまっすぐのびていた ちょっと安心
覚えにくい道じゃなかったから また来れる
ヘッドライトとすれ違うけど 誰も追い抜かさなかった
自分の心を運転するのは マニュアル車を運転するより難しい
オートマ限定の俺には もうちょっと修行が必要だ
どんどん進む 夜の街
街灯が照って明るいから 闇と言うより あたりは暗い青
さてこの道は どこに通じる?
駅前らしい明るい場所に近付いて 思わず手をうつ
あ 花京院! 何度かこの道に入ったことがあった
そう 知人宅へ行く時に何度か通った
よく宅飲みをやった人の家 大学に入った始めの頃のこと
なんか 嬉しい偶然だ
道を二度と忘れないだろう
見飽きた街の風景 人の様子
きっと大丈夫 なんとかなる なんとかしよう
夜の散策 別名 ローカルトーク