…君の孤独を薔薇に変えて
…毎朝水をあげよう
…悲しい日は そのトゲで痛みを伝えてくれ

 拝啓 右側の人へ
 秋深まる頃、いかがお過ごしですか?ご存知でしょうが私は相変わらずです。
 いつもいつも貴方のことを感じているわけではないけれど、毎日、ふとした時に貴方の存在を感じては、不思議と嬉しい気分になります。
 貴方はいつも私のそばにいてくれるわけではありませんね。忙しい時、仕事のことで怒られている時、そばにいてほしいと思う時にいてくれないことも多いです。もちろん、それを恨みに思っているわけでは決してありません。むしろ、私が貴方に気づけないほど、余裕を失っているのですから。
 友達と楽しく遊んでいる時や、家族と食卓を囲む時、本に夢中になっている時、そういう時も貴方は私から遠くにいるのでしょうね。けれど、一人きりで落ち込んでいる時、忙しい中ふと我にかえる時、友達と別れた帰り道、そんな時、貴方がそっと微笑みかけているのに気づきます。そしてそれをとても心地よく感じるのです。
 天気の良い朝、駅に向かって自転車に乗る時、いつも貴方は私の隣にいてくれますね。そして、今日一日頑張るようにと元気づけてくれます。また夜に疲れた身体を自転車に乗せて走っている時もそばにいて、お疲れさまと言ってくれているでしょう?
 貴方の声を聞くことはないけれど、聞こえないささやきでいつもいろんなものに気付かせてくれますね。金木犀の香り、美しい海、瞬く星や沈みかけの月。放っておけば見過ごしてしまいそうな日常のちょっとした変化や幸せを感じる時、貴方は私のそばにいて「ほらね?」と言ってくれるのです。貴方の顔を見ることはないけれど、そんな時いつも微笑む気配を感じています。
 だから私は、貴方を悲しませたり、苦しい顔をさせないようにしたいと願います。いつでも貴方が優しく微笑んでいられるようにと願います。そうあるように日々を過ごすと心に決めてもいるのです。私は貴方に添っているでしょうか?今、私が思うのは、もう少し、貴方を感じている時間が長くなるように、心に余裕をもって生きることです。それは無茶なことでしょうか?私の性格では、難しいのかも知れません。でも、なるべく貴方の笑顔を増やしていきたいと思うのです。
 長くなりました。いつも私のそばにいてくれる貴方に心から感謝しています。どうかいつまでも変わらず、私の右側にいて下さい。
 それでは、またお会いしましょう。
                                   敬具