23.濡烏


バス停で見かけた女の子
んにゃ、女の子と言っても 自分と同じぐらいの歳 多分女子大生
女子大前のバス停で彼女は下りて行ったから

そう 何となく目について
バスに乗ってから彼女が降りるまで
ずーっと見つめてた
え?ストーカーなんかじゃないさ
一回きりのことだもの

目についたのは 今どき珍しい真っ黒の髪をしてたから
さらさらのストレートでロング
触ってみたいななんて思ってもみたりして
だから 髪フェチとかじゃないって
毛並みが良さそうな犬とか
ついつい撫でたくなるでしょ?
キレイだったんだよ 天使の輪っかだっけ?
つやがあるから 光を反射して頭に輪っかみたいなのができるやつ
漫画みたいに もしくはシャンプーのコマーシャルのひとみたいに

声かけなかったのかって?
んなの無理だよ 初対面だし
ナンパなんて 成功した試しがないんだから
なーんか硬派そうだったし
彼女 身持ちが固そうって言うの?
声をかけたところで振り向いてもくれないって
自慢じゃないけど 俺 軽そうだしさ
見た目も 言動も アッチも
自分の身の程ぐらいわきまえてるって

あーでも おハナシしてみたいな〜
どんなだろう めっちゃお嬢様で「わたくし」とか言ったりして
わー今どきいないって そんなやつ
え?案外サイコちゃんだったりして?
うわーありうる コワー

話してたら興味わいてきちゃった
んー確率低そうだけど
今度またバス停で見かけたら
声 かけちゃおうっかなー

24.鳶色に続く


※無断転用・転載を禁じます。