60.インディゴ


黒髪の彼女の名前は なつきっていうんだって
長月って書いてなつきって読むんだって

「誕生日が何月か、聞かないの?」

名前を教えてくれたとき 彼女にそう聞かれたんだけど
なんでだろ?

ま いいか

そう また会えたんだよ
今度はバス停で
このごろいつも 女子大のバス停を通る時
彼女のこと探してたの
だってさー せっかく美人と
お近づきになれたんだよー? めったにないチャンスじゃん
名前も聞いてなかったしさ

そしたら このあいだ
バスに乗ってたら 女子大の前で
反対側のバス停に 彼女がいたんだー
もーバスを降りて猛ダッシュ
わー これって偶然〜 ってかむしろ奇跡?

その日の彼女はジーパン姿で 眼鏡かけてた
黒髪を後ろで束ねて うーん 休日のOLみたい?

声かけようって 思って良く見たら電話中で
でも 俺に気付いてニコって笑った
覚えててくれたんだ マジ嬉しい
電話を切った彼女にソッコー名前聞いた
じゃないと俺 絶対忘れるから

なつきだってー カワイイ名前

でね ナント! 彼女の方から「ご飯食べに行かない?」って
誘われたんだー ホントびっくり

「えー、でもいいの?」
「どうして?」
「だって、今の電話、つきあってるひとからでしょ?」
「…どうして分かるの?」

だって この前『つきあってるひと』のことを話した時と
同じ顔を彼女がしてたから そう思ったんだけど
違うのかな? なんでびっくりしてるの?
そう言うと彼女は ふうん だって

「鋭いんだ…意外」

なんかよくわかんないけど
それからご飯を食べに行った
美人を連れて街を歩くって わー なんかイイ気分

38.薔薇 に続く



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